10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
20
   

-第16章- ヒワミ感染

夜間病院に行った夜、家に戻ってから、救急病院の先生に言われたとおりにマミィはぼくの生まれた訓練所にメールをした。
すると案の定、翌日昼頃に電話があった。

「コクシジウムはどこにでもいる虫で…」と、いつものオバチャンが言うので、
「それは知っています」とマミィは応じた。

「ストレスとかでワッと増えます。環境が変わったのでそのせいでしょう。
お宅は気を利かせて病院に行ったのでしょうが、ぜんぜん心配するようなことじゃありませんから」
と、オバチャンは『ぜんぜん心配するようなことではない』というフレーズを何度も繰り返し、
そういうのをヒワミ感染といいます」と締めくくった。

聞いたことのない言葉にマミィは「はい?」と聞き返した。
ヒ・ワ・ミ感染です」とオバチャンはもう一度はっきりと言い直してから、ふふふ…と笑った。

何だかいやな感じだったけど、聞いたことのない言葉だったから、マミィは「あとでちゃんと調べよう」と思った。

マミィが『コクシジウム』をネットで調べたときには、「子犬の場合、放っておいたら死に至ることもある」と書いてあったし、子供や弱った個体では、致命的な症状を引き起こす事が多く、下痢が始まって半日後には亡くなるという事も多々あるという話も聞いた。
離乳後から3カ月齢ぐらいまでの幼若仔で発病するものが多い、とも。

食糞も「虫が原因ですよ」と獣医さんに言われた。

アルマくんのお友達
アルマくんのお友だちの恐竜さん




最近、ぼくはウエストがくっきりとして、あばらがはっきりとわかるようになった。
ずいぶん痩せてきたなぁ…とダディもマミィも感じていて、それはぼくが絶えず動き回っていて運動量が多いせいだと思っていたのだけれど、実は虫のせいだったのだと、今日の獣医さんの話でわかった。
お腹から虫がいなくなったらまたどんどん太ってくるよ、と言われた。
 
そう、今やぼくは全然子ブタちゃんではないのだ!
 
オバチャンの物言いにちょっと腹が立ったマミィが友達にその話をすると、
「ヒワミ感染? 聞いたことがない。 日和見(ひよりみ)感染なら知っているけど」と返ってきた。

それを聞いてマミィはハッと気がついた。
ああそうか、『ひよりみ』を読み間違えて『ヒワミ』と言ったのだと。
てっきり業界の専門用語で煙にまかれたのだと思っていたので、それがわかって、ちょっと溜飲を下げた。


お友達と
仲良しです



日和見(ひよりみ)感染というのは、免疫力が低下しているために、通常なら発症を起こさないような感染力の弱い病原菌が原因で起こる感染症のことをいうそうな。


お友達と
いつも一緒


電話の時に感じた不愉快の仕返しに、今度はマミィが「ふふふ…」と笑った。心の中で、そっと。

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第15章- コクシジウムをやっつけろ!

一夜明けて、ぼくは先代さんたちかかりつけの獣医さんが開く時間を待って、そこに連れて行かれた。
車で5分くらいのところにある。ぼくはもう車がイヤで、またフーンフーンと鳴いてしまった。

工藤動物病院 小

診療所に入っていくと、ぼくの6倍もあるような大きなわん子や、大きさはぼくと同じくらいだけどオトナのわん子だのがいっぱいいた。
そして、また次々に入って来たり、出て行ったりしていた。

今度も初めての場所なので、ぼくは緊張しまくって小さく小さくなってしまい、にじりにじりと隅へ隅へ下がっていった。

ダディが救急病院でもらった大きな封筒を受け付けに渡して、それからまた、お尻に体温計を入れられたり、綿棒を突っ込まれたりした。
先生が顕微鏡を見ながら、「たくさんいるなぁ」と言った。

今日は下痢止めとサルファ剤という、虫をやっつける薬をもらった。
コクシジウムはどこにでもいるとはいえ、ぼくが今暮らしているような一般家庭にはいなくて、犬がたくさんいる所の虫で、消化器官に寄生し、ぼくみたいに血便が出るというのは、症状が重いらしい。
感染経路は経口感染で、発症のほとんどが様々な要因のストレス(輸送や季節変化)によるものが多いと聞いた。

マミィの頭の中を、「5日間ケージの中で1人で過ごした」→「飛行機での輸送」→「環境の激変」…という図式がめぐった。

獣医さんからは、コクシジウムは細胞の中に入り込んでしまうため完全な駆除は難しいということも聞いた。
下痢止めは5日分もらったけど、下痢がおさまったらもう飲まなくてもよくて、サルファ剤は便の中に虫がいなくなった後、さらに1週間飲み続けるという説明を受けた。

一度体内からコクシジウムが検出されなくなっても、完全に駆虫するのは困難なため、忘れた頃に再発という事も多々あるのだとか。

まいったよ
大変な虫に取り付かれちゃったなぁ

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第14章- コクシジウム

この2、3日、ぼくが食糞(自分が排泄した便を食べる)という行為を繰り返していたので、マミィはその原因をネットで調べて、もしかしたらお腹の中に虫がいるのかもしれないと思っていたので、ああ、やっぱりそうだったのか…と、ものすごく納得していた。

「コクシジウムという寄生虫です」。
その虫は、綿棒の先にほんのちょこっと便をつけた物を検査しただけなのに、かなりの量でいたらしい。

「ここは救急病院なのでお薬は出せませんが、くわしい検査結果、診断結果を書いてお渡ししますので、それを持って明日朝一番でかかりつけの病院に行ってください」と言われた。

マミィが「感染源は?」と尋ねると、
「犬がたくさんいる所にいる虫ですが、感染源を特定するのは難しいです。
ブリーダーさんには、責任を追及するという意味ではなく、他にもたくさん犬がいるでしょうから、こういうことがあったということだけは、お知らせしておいた方がいいでしょうね」とも言われた。

人間への影響はないということも教えてくれた。

コクシジウム
顕微鏡で見えるコクシジウム



マミィは、またあの訓練所と関わりを持つのは厄介だなと思いつつも、それでもやっぱりメールをしないといけないんだろうなと、ちょっと気が重くなった。
またイヤな思いをするかもしれないからだ。

本当は明日ワクチンを打とうと考えていたので、それがもう少し先になってしまうのだろうということも少し残念そうだった。

それでもともかく無事に診察が終わり、下痢と血便の理由もわかったのでほっとして、車を走らせる間中またずーっと鳴き続けて、時にニワトリのようにも聞こえるぼくの声にうんざりしながらも、ダディたちは必死にぼくを慰め励まし続けて何とか家にたどり着いた。
 
家の前に車が止まった途端、我慢しきれなくなったぼくは、マミィがあわてて座席の上に敷いたブルーのシートの上に大量のウンチをしてしまった。

だって、この夜は、何度もお尻の中を刺激されたのだから無理もないでしょ。

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第13章- 下痢・血便 (その2)

下痢・血便

駐車場に車が止まり、エンジンの音が消えた。
ぼくはようやくほっとした。
駐車場の向こう側に大きなビルがあって、『ペット夜間救急病院』という大きな看板がこうこうとしていた。

「あ、あそこだね、駐車場はここでいいのかな」とマミィが言い、ダディはケータイで確認していた。
「いいみたいだよ、ここに止めて」。

ダディはぼくを毛布でくるんで抱き、車を出るとマミィと一緒に信号を渡った。
渡りきった目の前にある建物が病院だ。
建物に入ると、
「エレベーターはどこかなぁ」と、二人はキョロキョロしながら少しうろうろと歩き回ったけど、見つけられずに
「階段で行こう」とダディが言い、入り口のすぐ横にある階段を昇り始めた。

2階に着くとダディはちょっと疲れたらしく、
「重い!」と少し息を上げ、マミィが気の毒そうに言った。
「7㎏になったもんね」。

そして、透き通ったドアを押してぼくたちが病院に入ると、小学生くらいの男の子とお母さんが心配そうな様子でわん子を待っている姿が目に入った。
奥の方には60代くらいのおじさんとおばさんが、やっぱり同じように心配そうに待っているようだった。

「先ほど電話をしたものです」と受け付けでダディが名乗ると、マミィには「これに記入してください」と問診票というものが渡された。
初めての場所で知らない人が何人もいたので、なんだか体がぷるぷる震えてきて、ぼくはダディの腕の中で小さくなっていた。
 
少しすると、ぼくたちがさっき来た入り口から、おじいさんが重たそうに大きな年寄りのわん子を引きずるようにかかえて入ってきた。おばあさんも一緒だった。

受け付けで名前を訊かれたおじいさんが「チャコです」と答えると、受け付けのおねえさんが「女の子ですか? 男の子ですか?」と、また訊いてきた。

マミィが「名前からして女の子でしょ」と思ったときに、おじいさんが「女の子です」と答えた。
マミィはそういうこともちゃんと確認しないといけないんだ、大変なんだな…という顔をしていた。
ぼくはそんな事よりも怖くて、ますます小さくなっていた。


しばらく待っていると、男の子とお母さんのところのわん子が戻ってきた。
ぼくの方を向いて、鼻をひくひくさせていた。
ぼくは怖かったから、そちらを見ないようにして入り口のドアを見ていた。
でも入り口を向くと、今度は大きなチャコおばあさんの姿が目に入るからどうにも困ってしまった。
 
それからまた別の大きなわん子が診察室から出てきて、受け付けに一番近いところの椅子の前に坐った。
ぼくの恐怖感はますます大きくなって、どうにもこうにも落ち着かなくなってきてそわそわし始めた時に、看護師さんが来て「お熱を計ります」と、ぼくのお尻の中に体温計を入れた。
何だかお尻がイヤな感じ。

じっと耐えていると、看護師のおねえさんが「イヤな感じだよね。ごめんね~、ちょっと我慢してね」と手慣れた様子で体温計を取り出すと、「平熱ですね」と言った。

「え?」とダディとマミィは顔を見合わせて「何で下がったの? いつ下がったの?」とキツネにつままれたような顔をした。

すると、診察室から一人の若い男の人が出てきて「アルマちゃん」と呼んだ。
これがぼくを診てくれる先生だった。
先生はマミィからこれまでの様子を細かく聞きながら、もう一度お尻の中に体温計を入れた。

「熱は平熱ですし、元気も食欲もあるようなので、緊急事態ではないと思いますが、お腹に虫がいるかもしれないので、便を調べてみますね」と、今度はお尻の中に綿棒を突っ込んだ。
「え~、またお尻に入れるの~?」と、ぼくは目を白黒させた。
 
そして「調べる間少しお待ちください」と言われて、ぼくたちは待合室に出た。

次々に入り口からわん子たちが入ってくるし、診察室からも出てくるので、ぼくはもうこれ以上小さくなれないくらいに体を小さくして、相変わらずちょっと震えながら、他のわん子たちとはできるだけ顔を合わせないようにして待った。

この時間はぼくにはとても長く感じられたけど、実際にはそんなに長くなかったようだ。
再び「アルマちゃん」と呼ばれ診察室に入ると、
 
「やはり虫がいました。顕微鏡で見てみますか?」と言われ、ダディは顕微鏡を覗いた。
「もし見たくなかったらいいですよ」と言われたけど、ダディはこういうものを見るのはぜんぜん平気。
マミィは絶対に見ないけど。

ひなたでぬくぬく
日向でちょっとぬくぬく
=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第13章- 下痢・血便 (その1)

ぼくも最近はすっかりリラックスムードで、知らず知らずのうちにすずばあちゃんやごくうさんのように腹出しスタイルで眠っていたりするようだ。 

腹出し

そんなふうにようやく安穏な日々を送れる気配を感じていた10月18日、ちょうどぼくがこの家に来て10日めに、60日齢になったからと、マミィはぼくのご飯の量を増やすことにした。

すると、お昼近くになってぼくが何度も水のような下痢便をし、最後にはもう便は出なくなって血がポタポタと落ちてきたのを見て、マミィは仰天した。

すずばあちゃんやごくうさんは下痢をしたことがなかったし、ご飯の量を増やしたからといってお腹をこわしたこともなく、日齢、月齢とともに順調にフードの量を増やしていた。

「ううう…」「ううう…」とうめきながら踏ん張るぼくの様子を見ながら、よっぽどお腹が痛いのか…と、マミィは気をもんだ。
幸い、次のウンチはしっかり固まっていたし、いつも通りに元気で食欲も旺盛なので、ぼくがよく噛まないでほとんど丸呑みしている上に量が増えたので、消化不良を起こしたのかもしれないと、しばらく様子をみることにした。

ところが、それからちょうど1週間たった日の夜、ダディはぼくのお腹を触っていて「熱っぽいな」と感じ、マミィも「夕べもお腹が熱かったような気がする」というので、熱を計ってみた。
獣医さんのように肛門の中に体温計を入れることはさすがにできないので、お腹の表面で計った。

表面は肛門の中よりも低めなのだと、以前に獣医さんに聞いていた。
その表面体温が39.5℃もあったということは41℃近いんじゃないかということで、ぼくはすぐに『夜間救急病院』という所に連れて行かれることになってしまった。

飛行機で空港に着いた日以来、車に乗るのは初めてだった。
暗いし、車
のエンジンの音やほかにもいろんな音がするうえに、いろんなニオイもして、ぼくはとても不安になった。それで、病院に着くまでずっとクンクン言い続けた。

ずーっと止むことなく鳴き続けるぼくに、しまいにはダディもマミィも吹き出して「猫かい、お前は…」と言った。
…ネコはこういう声で鳴くの?
 
マミィは「大丈夫だよ~、もうすぐ着くからね~」とずーっと言い続けて、励ましたり慰めたりしてくれたけど、着くまでに40分もかかる遠い所だったから、ぼくはほとほと鳴き疲れてしまった。


=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第12章- トイレトレーニング その2

ぼくの噛み癖がだいぶ落ち着いてきて、マミィの目下の悩みは、ぼくがちっともじっとしていないので、サークルの中にいる時にしか写真が撮れないことくらいなんだけど、

「あれっ、アルマくん、どうした?」
とマミィが言ったのは、ぼくがここに来て1週間ほどした日のこと。
今までいつも同じ場所でトイレをしていたぼくが、いろんな所で用を足すようになってしまったときだ。

ごはん待ち


「今まではキンチョーしてたのかな?」とか、「まぁ、こんなもんかぁ」と言いながら、ぼくがオシッコをした場所にあの水色のシートを敷き始めた。
今まで2箇所だったのが、今では4箇所に増えてしまった。

マミィはそうそうトイレトレーニングがうまくいくわけがないと思っていたし、今までの状態で完成したわけでもなかったので、さほど気にはしていない。

先代さんたちだって、かなりな時間がかかっているのだ。
性格が違うようにトレーニング方法もそれぞれに違っていて、すずばあちゃんの時には、カーペットにオシッコをされてしまうことが多くて苦労したようだ。
それでも小さなペットトイレに上手にするようになった。

すずばあちゃんは、場所で覚えるタイプ。
小さかった頃には「散歩に行くよー!」と言うと、まずダーッとトイレに走って行き用を足してしまってから、おもむろに部屋から出るというぐあいだった。

ごくうさんの粗相はカーペットではなく床だったので、掃除がしやすくて助かったようだ。
ごくうさんは慎重で警戒するタイプなので、周りを囲まれているような所がトイレに向いていて、家の中でもそういう場所を探した。
ワクチンが済んで散歩ができるようになった時には、庭の1箇所に場所を決め、そこで用を足してから散歩に行ったのだが、そこも周りをしっかり囲まれているような雰囲気だった。

ダディはごくうさんにもペットトイレを使おうと思っていたけど、それが置いてあるとよけてしまうので、これを使う方法は却下した。
 ごくうさんは、ダディやマミィがして欲しい場所で「ワンツー、ワンツー」と言ったら、いつでもそこでできるように躾けられた。

ぼくはシートが汚れているとそこにはしないので、ぼくがオシッコをすると、マミィはすぐに新しいものと取り替えている。
ごくうさんもそうだったけど、
「案外、わん子たちってきれい好きなんだな」と、マミィはわかっている。

そしてぼくは、シートを置く場所の数が増えたとはいえ、その場所でウンチもオシッコもしているので、トイレに関しては一番手がかからないと言っている。

やんちゃだ、きかん気だと言われながらも、それなりに取り柄はあるものなんだよ。
ね、マミィ…。

最近お気に入りのオモチャ
最近お気に入りのオモチャ
=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第11章- パブロフの犬

ぼくはまだ幼犬なので、ご飯はフードをお湯でふやかし、やわらかくして食べさせてもらっている。
その準備にはけっこう時間がかかる。

マミィの様子を見ていると、まず小さなスケールをテーブルの上に置く。
それからぼくの食事用のおわんをその上にのせ、その中にフードを入れて重さを計る。
次に、計量カップで水の量を計ってなべに入れ、沸騰させる。
それをフードの入ったおわんに注ぎ、タイマーを15分にセットしてやわらかくなるまで待つ。

フード

マミィがスケールを取り出すと「お!ご飯の準備ですかい?」と、わくわくする。

 ごはん待ちJPG
 
それから「できたよ~」を知らせるタイマーのピピピッが鳴るまで、ぼくはじーっと待つ。
案外長いので、マミィが遊び相手をしてくれることもあるし、時々お行儀の良いお座りをしたり、うろうろしたりしながら待っている。

いよいよお待ちかねのピピピッが鳴ると、ぼくはうれしくて、2回ほどぴょーんぴょーんと跳び上がり、マミィは「アルマ、ご飯だよ、ご飯!」とぼくに声をかける。
 
そしてその時に、笑いながらいつも言うんだ。「パブロフの犬だね」。
いや、マミィ、ぼくはパブロフではなくて、ラブラドールだよ。忘れたの?


=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第10章- カミグセ

ここに来てから1週間ほど、マミィはぼくのカミグセ(噛み癖)に悩まされた。
「まるでリストカットをしているか、DV(家庭内暴力)でも受けている人みたい…」と、青色や紫色になった傷だらけの自分の手や腕を見つめた。ぼくにはリストカットもDVも、何のことやらわからない。

ぼくのこの噛み癖のせいで、マミィはだいぶストレスがたまってきて疲れているようだった。

ぼくをこの家に迎える決心をする前、実はいくつかの選択肢があった。
盲導犬になれなかったキャリアチェンジ犬を引き取る、被災犬を引き取る、あるいは捨てられて愛護センターなどに持ち込まれた犬を引き取る…などだ。

でも、ダディもマミィも大人になってしまった犬を躾ける自信がなかったので、やっぱり子犬から育てよう…と、ぼくを選んだ。
それなのに、噛み癖でこんなにも苦労するのなら、成犬を引き取っても同じだったのではないか、その方がもしかしたらよかったのかもしれない…と後悔さえし始めていたようだ。

噛み癖 1

マミィは犬の行動学や躾けの本を何冊も読み、ネットでも必死で解決策を探した。
しかしどれを試してみても、ますますぼくの噛み方が強くなってしまうだけだった。
特に、仰向けにひっくり返して鼻先を押さえつけるという方法は最悪だった。
マミィ自身、こういう暴力的な方法は好きになれなかったし、ぼくもこれはひどく苦痛で気持ちが荒れた。

とうとうマミィは自力だけではとても無理だと限界を感じ、専門家に助けを得ようと、ぼくの生まれた訓練所にメールを送った。
ところが翌日メールの返事を読んで、たいそう腹を立てていた。ダディもそれを読んで、憤慨した。

そこには「サークルから出さないようにしたらどうですか?」とか、「幼い時に噛む事に加減が出来ないのは、全く正常で異常ありません」などと書かれていた。

「6ヶ月くらいから、徐々に加減しますが、その頃までは兄弟と遊んだり、喧嘩しているつもりです」と。
また「こちらではたくさんの犬の世話をするのは、二十歳前後の女の子たちですが、噛まれて困るほどの相手はしません」
「常に犬とは一歩距離をとるようにした方がうまくいく」などとも。

ラブはすぐに大きくなる。
5ヶ月や6ヶ月になったらほぼ成犬の大きさなのに、それまで噛み加減ができなかったら危険だとマミィは思った。
小さな子が近寄ってきたりしたら危ないから、散歩にも連れて行けなくなる。
この返事を書いた人は、本当にラブのことがわかっているのだろうか…と。

それ以外にもひどく上から目線の言葉が連なっていて、きっとこれを書いたのは、この文面に出てくる「二十歳前後の女の子」なのだろうと感じた。

噛み癖 2

マミィは子どもの頃にも犬を飼っていて、それはラブではなかったけれど、その犬が小さかった頃にも噛んだりはしなかったし、その犬が大人になり3回ほど出産した時の子犬たちもそうだった。
すずばあちゃんもごくうさんも然り。
軽い甘噛みはあっても、たいていは痛いほどには噛まない。
うっかり強くなってしまったような時には軽く叱るだけで、すぐに噛まなくなったものだ。
最初から思いっきり噛んできたりはしない。
叱られてさらに強く噛んでくるようなこともなかった。


とにかく、あまりにもその物言いに腹が立ったマミィはこんな返信を送った。

『早速のお返事ありがとうございます。
ただ、こちらの状況がきちんと伝わっていないようですので、残念です。
(伝え方がいけなかったのかもしれませんが…)

前の犬たちと比較するのが良くないことは承知していますが、性格が違うので、前の子たちと同じ方法ではうまくいかないだろうと考えました。
人間でもそうですが、それぞれの子どもで特徴があり違いがあるので、それはそれで受け入れ、その上で、その個性を生かした躾けができないものか、上手に対処できないか…と考えてご相談しました。

正常であるとか、異常であるとかの問題ではなく、この子にはこういう特徴があるけれども、こういう子にはどう関わっていけば噛み癖をなくして、上手に躾けられるのか…ということに対するアドバイスをお願いしたつもりでした。
こちらとしても、こんなに噛む子は初めての経験ですので。

またさらに申し上げれば、ご指摘されたような、噛んでもそのまま触り続けるようなことはしていませんし、不必要に触りすぎるようなこともしていません。
手は出さずに、危ないことをしないようにそばで見ているだけです。

そちらでは、二十歳前後のお嬢さん方が世話をされているとのことですが、ブリーダーさんとしてたくさんの子犬の世話をするのと、家族として一頭に関わっていくのとでは、根本的に大きな違いがあるように思います。

私たちは販売する子犬を世話するのではなく、家族として一緒に生活するために『育てている』のですから。
中学生の娘も、「アルマは噛むので恐い」と言い始めているので、これは子犬にとっても、私たちにとっても早めに対処していかないとまずいと感じ始めて、アドバイスをお願いしたのです。

もう少し様子を見て、こちらなりに模索してみようと思います。
私たちはプロではありませんが、これからこの子とは長く(恐らく10年以上になるでしょう)付き合っていくのですから、プロのブリーダーさんの方法ではなく、『家族として』楽しく平和に暮らしていけるように、私たち家族に合った対処方法を探ってみます。

お電話はしないことにしました。大変お世話になりました。』
 

ダディはそれを読んで、「よくそのくらいで抑えたね。オレならもっと怒ってる」と言った。

 噛み癖 3

翌朝、訓練所のオバチャンから電話があり、
「メールを読んだ者が失礼な事を言ったようで申し訳ありません」というお詫びがてら、いくつかのアドバイスをしてくれたようだった。
たとえば、噛まれたら逃げない。手を口の奥に突っ込むなど…。
でも、それらの方法はすでにマミィがやってみて、すべて効果のないものばかりだった。
 
マミィはあのメールですっかり訓練所への信頼を失くしてしまっていたので、「それは全部やりました」とも言わず、とりあえず「わざわざありがとうございました」とお礼を言って電話を切った。
そして、つぶやいた。
「それぞれの犬で個性が違うのに、十把一絡げで言われてもねぇ…」。

「この人を噛むと痛いことをされるからしない」という教え方だと、ダディやマミィを噛むことはなくなっても、マユチャンのことはまだ噛むかもしれないし、よその子どものことも噛むかもしれない。
『服従心』というようなものではなく、『噛むのはいけないこと』とわかって欲しい…というのが、マミィの考えでもあった。
ラブはそういう理解ができる賢さをもっているはずだと。

その日、ぼくがまたカプッとやってしまった時、マミィは何も言わずにぼくに覆い被さった。
ちょうど『上から物が落ちてくるときに子どもを守るような体勢』と言えば、わかりやすいかな?
そうやってしっかりとぼくを押さえ込んだ。不思議とぼくは何だか落ち着いて、噛むのをやめた。
その時から、ぼくがカプッとやるたびに、マミィはそうやって、素早く、ぼくを抱きしめるように上に覆い被さる。

マミィはそれを何かで読んだのでも、聞いたのでもなく、思わずした行動だったのだけれど、それが何と、ぼくを落ち着かせるのに効果があったのだ。

噛み癖 4
 
今では、マミィの手から青色や紫色のアザも傷も消えている。
相変わらずつい強く噛んでしまうことが、たまにあるんだけどね。

マミィはある日気づいた。
フツーの子犬ならぺろぺろするところをぼくの場合、パクッとなってしまうことに。

「遊んでよぉ」…パクッ。
「楽しいなあ」…カプッ。
「あ、マミィの手だ」…ガリッ。

今も、つい興奮するとそうなってしまう。
 
噛み癖 5

マミィは前にも感じたように、ぼくは母犬や兄弟犬との関わりが少なくて、噛み方を加減することをしっかり学んでこなかったのではないかと、今もそう思っている。
 

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第9章- やんちゃ坊主

カーテン1


この家の先代犬たちはとてもおとなしかった。
すずばあちゃんはおっとりとした性格で、いつも家族にべったり。
たとえ散歩中に首輪がスポッとはずれるようなことがあっても逃げたり走ったりせず、決して家族のそばを離れなかったという話だ。

出かけていた家族が帰って来ると、一人で留守番をしていたすずばあちゃんは、クーンクーン、ング~ング~と激しく鳴きながらお出迎え。
「淋しかったよぉ、淋しかったよぉ」と、我慢して待っていたことをしきりにアピールしていたようだ。

ごくうさんは男の子だからそれなりにやんちゃではあったらしいけど、来た日からフンフンと鳴きながらマミィの膝の上によじのぼっては、いつも膝の上で寝ていた。
6ヶ月を過ぎても、マミィがトイレに入るとドアの外でクンクン言いながら待っていた。

もっとも、「用事が済むまでここで待っててね」と言われれば、階段を上れないわけじゃないのに、階段の下で30分でも1時間でもじっと坐って待っている辛抱強さはあったというが。
ごくうさんは子犬ながらも繊細で賢く、人のすることをよく見て行動するタイプだったようだ。

先代さんたちの共通事項は『超甘えん坊』だ。

マミィはダディのことを、あまり観察眼の鋭い人だとは思っていないようだが、そのダディが「アルマはぜんぜん甘えてこないね」と言ったので、この人がそう感じるくらいだから、やっぱりそうなのかな…と、ぼくを見た。

活発に走り回り、次々に色々なことに興味を持ち、あっちにこっちに好奇心いっぱいのぼくの行動は、マミィやダディの目には、ちっとも家族のことなんか気にしないで、独立独歩、我が道をゆくタイプに見えるようだ。

カーテン2


すずばあちゃんがぼくと同じくらいの頃、マミィは洗濯物を干しながら、「飛びつかれるかな?」と心配したけれど、頭上にぶらんぶらんとたくさんぶら下がっていても、まったく関心を示さなかった。

ごくうさんの時には、さすがに男の子だからやられるか…と覚悟を決めていたにも関わらず、やはりごくうさんも特別な興味を示さなかった。
 
そういうわけで、わん子は洗濯物には興味を示さないんだと、マミィの頭の中には刷り込みがされてしまった。

カーテン3


だから、ぼくが思いっきり洗濯物に飛びついて落とし、カーテンを引きちぎる勢いで強烈に引っ張った時に、ガラガラと音を立ててラブの偶像が崩れ落ちていったのだった。

「すずとごくうはラブの中でも特別におとなしくて育てやすい子たちで、やんちゃできかん気の強いアルマがフツーなのかも」…と、結局、刷り込みは修正を余儀なくされることになった。


カーテン4


「この子は、まぁ、ずいぶんとたくさん、初めての経験を味合わせてくれるわ」、
マミィがふぅーっと、大きくため息をついた。

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第8章- アルマくんの天敵

ぼくをサークルの中に入れると、ダディもマミィもマユチャンも、決まってすることがある。
扉をキィーと閉めて、次に短かくて細い棒を、小さい小さい穴の中に差し込むんだ。
これは『カギ』というもので、そう! これこそが、今、ぼくが一番キライなものなんだ。

この間、扉をしめた時にマミィの手の先を見ていて、
「コイツか!」とわかった。コイツがぼくをサークルに閉じこめるんだ。
コイツのせいで、鼻で一生懸命に押しても両手で必死にゴリゴリしても、扉が開かなくなるというわけだ。


 腹立たしいヤツ!
 懲らしめてやるぞ。

 かぎ3



「コイツめ! コイツめ!」
「どうだ、マイッタか…」

かぎ4





「……」。
「開けておくれよ~(T.T)」

アルマくんとカギ1




=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第7章- 頻尿

2日めの夜、マミィはぼくのトイレ回数の多いことが気になり始めた。
ダディは、「水をいっぱい飲むからだろう」と言った。
「けっこうガブガブ飲んでるじゃん」。

いや、そんなに何度もトイレに行くほどには、飲んでいない。それに、そんなにたくさんがぶ飲みするほど暑い気候でもないし…と、マミィは思った。

翌朝、マミィは4時間ほどぼくの行動を細かに観察してから、ぼくの生まれた『訓練所』にメールを送った。
ストレスということもあるのかなぁ…と思いつつ…。

ケージの中 7章


『お世話になっております。
お忙しいところ恐れ入ります。少し気になることがあり、メール致しました。

昨夜から少し頻尿のような感じがしたので、今朝、様子を見てみました。

朝6時にサークルから出て排尿をしましたが、
その後6時5分、6時25分、7時03分にしています。
その後しばらくサークルの中で眠っていましたが、
10時、10時23分、10時36分、10時48分、10時50分、10時58分にしました。
その後またサークルに入れたので、今は眠っています。

最初は黄色い普通の尿の色だと思うのですが、
間隔が短く、何度もしているうちに、後の方は無色透明のような感じになります。
何度もしている割には、普通量出ているようです。
(後の方になると少なめになってはきますが)

排便は朝から6時、6時29分、10時10分です。
(普通の便です)

排尿も排便も、同じトイレシートの場所にしていて、
粗相は1回もありません。
自分でその場所にしに行きます。
様子は、いたって元気で活動的です。
フードもがつがつ食べます。

病院に連れて行った方がいいでしょうか?
お返事いただけますと、助かります。
よろしくお願い致します。』

すると、昼頃に訓練所から電話があった。
「緊急性はないと思います。
長い時間飛行機に乗ったし、旅の疲れがでているのではないかと思います」。

雄で、しかも子犬だったら、膀胱炎の可能性は低いし、雄の中にはチビチビと排尿する癖のある子もいるという話だった。
マミィは少し安心して、サークルの中ではあまりオシッコをしている様子もないので、またしばらく様子をみるとにした。

ただ、サークルの中にずっと入れられて、ストレスがたまっているのではないかというのも気になるところだったので、それも訊ねてみた。すると、

「兄弟犬たちは、地元の人とかは早くに連れて行ったので、5日間くらい、一人で犬舎やケージの中にいました。
ケージはタタミ一畳分くらいの広さです」

という返事があった。広さは今と変わらんな…と思いながら、話から推測して、ずいぶん早い時期に母親から離されているような印象を受けたようだ。

…ということは、強くカミカミした時に、繰り返し母親から叱られて学ぶ…という経験をしていないのかな、そういう事を親や兄弟とのふれあいの中から学ぶ前に、早々と一人になってしまったってことなのかな…と、マミィは気になったのだが、確認はしていない。

わかったのは、ぼくが、ここに来る前に5日間近くもしくはそれ以上、ケージの中で一人で1日を過ごしていたという事実だ。
マミィは、親兄弟とあまりに早く離すのはよくないだろうからと、10月8日まで、ぼくが50日齢になるのを待った。
だからそれを聞いて、もっと早くに引き取ればよかったのかなぁ…と、ちょっと後悔をした。

ごめんよ、マミィ。ぼく自身は、あまりにも小さかったので覚えていないんだよ。
覚えているのは、ここに来る前、ずいぶん長い間一人ぼっちでケージの中にいたことだけなんだ。
それはそれはものすごく心細くて淋しかった…。

7章用


それはともかくとして、ぼくのオシッコの回数は、次の日にはすっかりフツーに戻った。

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第6章- 「オイデ」と「スワレ」

「上出来じゃん、アルマくん! 昨日からトイレの粗相、1度もしてないよ!」
そうマミィが言ったのは、ぼくがこの家に来て3日めだ。

さて、ぼくが来た次の日の朝、ぼくがマミィに向かって歩いていると突然に、「アルマ、おいで」とマミィが言い、ぼくがそばにたどりつくと、
よーし、よし、いい子だね!」とほめてくれた。
 
なぜかその日は、そばに行こうとするたびに、何度かそれが繰り返された。

それで、これは、ぼくにそばに来てほしい時の合図なんだなと感じたので、喜んでほしくて、
「アルマ、おいで!」と言う声を聞くと、急いで走っていくようになった。

走って行くと必ず、「よーし! いい子だ!」と、体をいっぱい撫でてくれるので、ぼくはお尻がまん丸になって、まるで足が宙に浮いたような感じがして、シッポがフリフリしてしまうんだ。
 
今日は、ぼくが坐ろうとすると「アルマ、スワレ」と言う。
ぼくが坐ろうとしているところを見かけるたびに、そう言う。

もともと坐ろうとしていたにも関わらず、坐ったときには、やっぱりとてもほめてくれる。
だから今度もぼくは、これはぼくに「坐ってね」という時の合図なんだな…と気がついて、歩いている時でも、立っている時でも、遊んでいる時でも、「アルマ、スワレ」と言われたら、いつでもすぐに坐ることにした。

アルマくんのおすわり

そして、マミィがうれしそうに言った。
「アルマく~ん、オイデもスワレもあっという間に習得だよー。えらいねぇ。超優秀!」
それから、ぼくの体をまたなでてくれた。

ところがその夜、ダディが立って何か用事をしている所に近寄っていったぼくは、突然にオシッコがしたくなり、歩いているそのままの格好で、ジョーッと出してしまった。
 ……それは、ダディの足元だった。

「何だコイツ、何がしたいんだ! 何の前ぶれもなく突然にしたぞ!」
ダディが叫び、
「ホントだ! 今のは察知できなかったね」と、面白がりやのマミィはひどく楽しげな声をあげた。

アルマくんの失敗

「アルマはトイレの習得が早い!」と、うれしげに話していた矢先のことだった。

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第5章- やっぱり子ブタちゃん

今年、札幌の夏はとても暑く長かった、とマミィが言っても、ぼくにはいつもの札幌の夏も、今年の夏もわからない。
宮崎生まれだけど、宮崎の今年の夏もわからない。
なにぶんにも、生まれてすぐのことだから。

リビングの大きな窓がサークルの横にあり、ぼくはそこから庭の栗の木を見ている。
今は栗の実が落ちる季節なんだそうだ。
ぼくは食べさせてもらえないけど、おいしそうにゆでた栗の実の匂いをかいだ。
ぼくも一度は食べてみたいものだ。

庭の栗


ところで、ぼくが宮崎からここに来る時に入れられていたあの小さなケージの外側に、少し大きめの茶色の封筒が1つ貼り付けてあって、その中に飼い方の説明書が入っていた。
『母子手帳』などというものも一緒に入っていて、予防接種の記録がしてあったりする。
 
それを読んで、不満そうにマミィが言った。
「え~、1日中サークルの中に入れておくの?」

送られてきたケージ

 
説明書に、『1~2週間はケージの中で生活させてください』と書いてあったというのだ。
ぼくはここに来る前も、犬舎やケージの中で1日暮らしていたけどね。

「すずの時もごくうの時も、来た次の日から好きなだけ自由にさせていたのに」。
寝る時や、留守番をさせるときにだけサークルの中に入れていたらしい。

それでも、ものすごく不満そうではあったけど、絶え間なくしきりに動き回る活発なぼくの動きをしばらく見ていたマミィは、結局、サークルの中に入れておくのが妥当だという判断を下した。
それがぼくにとっての一番の安全策だと。

ケージの中でもじっとしていないアルマくん
サークルの中でもじっとしていないアルマくん



それで、1日を過ごすのには今のままでは狭いだろう…と、サークルを広くするために、ダディと一緒にペットショップに買い物に出かけていった。

しばらくして帰ってきたマミィは、開口一番、
「やっぱりアルマは子ブタちゃんだったね」と笑った。
ペットショップにぼくよりも2日早くに生まれた黒ラブの子が2頭いて、ものすごくほっそりしていたという。
「ごくうもあんな感じだったよね」。

あれが普通の子犬でしょ、とも言った。

それから、
「すずもごくうも、来た初日から仰向けになって超リラックスのお腹出しで寝てたけど、この子は、来てから一度も仰向けになって寝てないね。
お腹が重くて、仰向けになると苦しいのかなぁ…」と、仰向け寝は、まるでラブの専売特許ででもあるかのように思っているらしく、いかにも不思議だなぁという顔で、ぼくをみつめた。

ごくうのアクロバット
ごくうさんのアクロバットスリーピング 

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第4章- 先代犬たち

ぼくは、この家で暮らす3代目のラブラドールだ。
初代は黄ラブの『すず』ばあちゃん、次は黒ラブの『ごくう』さん。
どちらも既に亡くなっている。

すずばあちゃんは10歳を過ぎるまでここで楽しく暮らしたけど、ごくうさんは成犬になるまで一緒に暮らせなかった。
満7ヶ月になる少し前に亡くなった。
マミィはそれをひどく悔いて、心を痛めている。
成犬になるまで育てられなかったごくうさんへの詫びのつもりで、黒ラブを飼おうと思った。
 
いや、詫びだけではない。
盲導犬のパピーだったごくうさんの子犬育てがある日突然に途切れてしまったことで、マミィの夢は座礁してしまったのだ。
繰り返し繰り返し襲ってくる悔いと、責任を感じて重圧感にもさいなまれる。
鬱々とした暗い気持ちで時をやり過ごしていた。

ごくう
先代犬 ごくうさん


どうにもならなくなってしまった大きすぎる、すずばあちゃんとごくうさんの二つ分の心の穴を、再び子犬育てを続けることで何とか修復しようとしている。
 
でもちょっと欲張りなことに、すずばあちゃんに似た黄ラブもあきらめきれなかった。
そんなこんなで折衷案として、黒ラブの男の子、そしてすずばあちゃんと同じように警察犬の血統であるというところにこだわったのだ。

すずばあちゃんの誕生日は6月19日で、ぼくは8月19日。
「日付が同じ!」というのにも惹かれたらしい。
マミィの誕生日も12月19日だ。
案外、くだらないところで『はしゃぐ』人だ。

すず 小
先代犬 すずばあちゃん

 
そしてぼくは、ごくうさんの首輪を引き継いだのだった。

ところで、ぼくは実は知っている。
ぼくが無事に1歳の誕生日を迎えることができたら、黄ラブも家族に迎えようとマミィが画策していることを。

 

引き継いだ首輪
ごくうさんの首輪を引き継いだアルマくんだよ


 





=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第3章- トイレトレーニング

 長旅で疲れていたのかぐっすり眠っていて、気がついたら朝の6時だった。
 
 ダディもマユチャンも、あっちのドアを開けてあっちに行ったり、こっちのドアを閉めてこっちに来たりして、バタバタと忙しそうに走り回っている。のんびりした様子なのはマミィだけだ。

ケージからながめる

 マミィがサークルの扉を開けてくれた。ぼくはやっと解放されたのがうれしくて、ぴょんぴょんと跳びはねて部屋中を走り回った。ダイニングテーブルの下や、籐の長イスの後ろにもぐりこんで探検した。
 それから冷蔵庫の横の壁をがりがりひっかいて、ついでに冷蔵庫もがりがりしてみた。なかなか面白い。
 床に置いてあった紙袋を見つけたので、くわえて思いっきり振り回したら、中身が全部吹っ飛んでいった。すごく楽しかった。マミィは何も言わずにぼくのすることをじーっと見ている。

 動き回って喉が渇いたので水を飲んだら、マミィが何か気にして後にくっついてくる。
 水を飲んだからかオシッコがしたくなったぼくがしゃがんだら、あわてて水色の紙のシートをぼくのお尻の下に敷いた。このシートは何だろう。ぼくのサークルの中にも敷いてある。
 
 ご飯を食べた後に、またオシッコがしたくなった。さっきの青いシートにぼくのオシッコのニオイがしたので、そこでしてみた。すると、マミィが上機嫌で
「あ、いい子だねぇ~、いい子だねぇ~!」と、ぼくの体をいっぱい撫でてくれた。ぼくがオシッコをするとそんなにうれしいのかな。
 そう思っていたら、ウンチもしたくなってきたので、またその場所でしゃがむと、
「ワンツー、ワンツー」と、不思議な言葉を(呪文か?)となえる。そしてまた喜んで、いっぱいほめてくれた。

アルマのウンチ

 しばらくして、またオシッコがしたくなった。次はパソコンやピアノが置いてある近くのカーペットの上にした。今度はだれも何も言わなかったけど、マミィはそこにまた青いシートを敷いていた。これは何の遊びなんだろう?

 最初にシートを敷いた場所は、ご飯を食べたり水を飲んだ後にカーペットのある広いところに行くときの、通り道だ。だからオシッコやウンチをするにはとても都合がいい。
 
水を飲んだり、ご飯を食べたり、遊んでいる時にはそこに走っていって用を足す。さぁ、するぞ! と、しゃがむと、なぜかみんなの呪文が始まる。
「ワンツー、ワンツー!」

 そして、ぼくの用足しが終わると、だれもが必ずものすごくほめてくれる。だから、たまにもう1枚のシートの上ですることもあるけど、大抵はここでする。

 こうしてぼくの新しいお家での第1日めは、オシッコとウンチとご飯と、サークルの中でのお昼寝であっという間に終わってしまった。
 実のところ、1日のほとんどは眠っていた。でも、ぼくにとってはあわただしくて、忙しくて、不思議な一日だった。
 
 ぼくが横になっている姿をみながら、サークルの扉の向こうでマミィが小さくつぶやいた。
「この子、昨日も今日も1回も吠えなかったね」。

おすわりのアルマくん

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第2章- 新しいお家

飛行機と自動車の長い旅が終わった。
ぼくがこれから暮らすのは、このお家のリビングだ。

「案外『フツーの』子犬だったね」とマミィが言った。
 
「『大きくなってしまって、子ブタちゃんみたいなんですよ』って言うから、どんなブーちゃんなのかと心配したよね。
オレなんか、今朝、ブタを散歩させてる夢まで見たんだから…」と、ダディ。

どうやら、ぼくが生まれた家のオバチャンが、ぼくのことを『子ブタちゃん』と言ったようなのだ。
失敬な! ぼくは立派なラブラドールの子犬だ!!
 
ご飯を食べた後、少しの間だけ自由に部屋の中を歩き回らせてくれたのに、もう、早々にサークルの中に入れられてしまった。
トイレトレーニングがしっかりできるまで、しばらくはここがぼくの生活の中心になるらしい。

トイレトレーニングって、一体何だろう。
ぼくは好きな時に、好きなところで、ウンチもオシッコも自分でちゃんとできる。

 
ちょっとあきらめ顔


ちょっと不満だから、サークルに敷いてあるタオルをガサガサほじくったり、ひっぱり回したりしてやった。
それでもみんなして知らん顔してるから、キュンキュンと可愛らしく鳴いてみた。
…なかなか開けてくれない。

ちっとも出してくれないから、もう少し悲しそうにキューンキューンとやってみた。
本当に泣きたくなってきた。
それなのに、どうしても無視を決めこんでいるようだ。
 
しばらくは頑張って鳴いていたぼくも、効果がないのでやめた。
あきらめは、けっこうあっさりと早いほうかもしれない。
それに、鳴いているうちに疲れて眠くなってしまったんだ。


子豚ちゃん

=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



-第1章- 10月8日



今日は、どれだけたくさんの音を聞いただろうか…。

ゴーゴーというものすごく大きな音や、ゴロゴロと何かを運ぶ音、何人もの高い声や低い声。

朝からぼくは小さな箱のようなモノに閉じ込められて、その中でじっと、入れ替わり立ち替わり次々に耳に入ってくるその音たちや、色々な匂いにドキドキしながら、長い時間を過ごした。
 
そろそろ暗く狭い場所にうんざりしてきた頃、突然にぐらりと大きく体が揺れて、身動きのとれない箱の中で、ぼくは少しじたばたした。

急に明るい所に連れて行かれたので、ちょっとまぶしくて、ぼくは目をぱちぱちとしばたいた。

それから、そのせまっ苦しい空間で上手にお座りをした。


ANA貨物カーゴ


ぼくが入っている箱の扉のまん前に、めがねをかけた知らない女の人の顔があって、ぼくの姿を見ようと、しきりに目をまんまるくしていた。

しばらく何人かの男の人たちがやりとりする声があって、また箱が少し揺れた。
今度もどこかに運ばれていくのかと思っていたら、すぐに静かにコトン…と止まり、体が安定した。

車の匂いがした。


飛行機から車へ


「どうやって開けるのかな」という男の人の声が聞こえた。
「ここを押すんじゃないの?」と、次には女の人の声。
 
スウッと箱の扉が開くと、水の入った大きな入れ物が、ぼくの目に飛び込んできた。

長い時間飛行機に乗るぼくは、酔わないように朝から何も食べていなかったので、とってもお腹が空いていたし、喉も渇いていた。

そーっとそーっとから顔を出すと、
「アルマ、お水だよ」と、女の人と男の人が口々に言った。

ぼくはちょっと緊張しながら、ゆっくりと水の中に舌を入れてみた。
口の中がひんやり気持ちよかった。
乾いた喉を通って、空きっ腹に水がじわじわとしみこんでいった。

このくらいでおしまいにしようかと思ったんだけど、何しろ喉がからからだったものだから、つい止まらず、ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃと、舌を忙しく動かし続けた。


水を飲むアルマくん


「ずいぶんよく飲むね」と、男の人が言うと、
「よっぽど喉が渇いているんでしょう」と、女の人が答えた。

どうやら、これがぼくの新しいダディとマミィなのだと、この時になってぼくはようやく気がついた。

車の中には、3人姉妹の末っ子の『マユチャン』も乗っていた。
『マユチャン』は中学3年生だ。

それからぼくは新しいマミィに抱きかかえられて、車の中に連れて行かれた。
マミィの手から少し甘くおいしそうな匂いがしてきたので、指をくわえてチュパチュパ吸ってみたけど、おっぱいは出てこなかった。
だからちょっとカミカミしてみたけど、やっぱりお腹の足しにはならなかった。

「さっき食べたソフトクリームの匂いがするのかな?」とマミィが言った。
何だ、もう食べちゃった後なのか…。
 

家に向かう車の中で


それからまた長い長い時間その自動車に乗って、ようやく千歳空港から札幌の家に着いたのだった。




=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



『アルマくん成長記』 -序章-


 
やぁ、ぼくは黒ラブラドール・レトリーバーのアルマくんだ。
え? なぜ自分に『くん』をつけるんだよ…だって?
それは実に簡単な理由だ。それは、ぼくがまだ赤チャンだからさ。

ぼくは2012年8月19日生まれ。
今日は9月11日だから、生まれてまだ1ヶ月にも満たない。
正真正銘、立派な赤チャンだ。
 
マミィは現役警察嘱託指定犬で、事件現場や、行方不明捜索にも時々出ている。
ダディはショードッグ系で、とても格好の良いハンサム犬だ。
どちらも英国系でおとなしいので、ぼくもきっと立派なオトナ犬(いぬ)になるんじゃないかな。
 
今日、これからぼくが一緒に暮らしていく新しい家族が決まった。
10月、もう少し大きくなったら、ぼくはここ九州の宮崎から、北海道の札幌という所に行く。
どんなお家なんだろう。どんな人たちなんだろう。
楽しみだなぁ。

その日が来るのを、短い首を一生懸命に長くして待つことにしよう。


=============
☆ぽちっと応援お願いします☆
=============
♪♪ ランキングに参加しています♪♪

↓ ぽちっと元気に!
にほんブログ村 犬ブログ ラブラドールへ
にほんブログ村



カレンダー

09 | 2012/10 | 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

カテゴリ

最新コメント

リンク

月別アーカイブ

プロフィール

アルまま

Author:アルまま


周りの人皆に、勝手にO型だと思いこまれている射手座のA型。

夫の生まれ育った札幌で暮らすも、実は暖かい地方の生まれで、冬は苦手。

3人姉妹の母。

最新記事

カウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ペット
84位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]

50位
アクセスランキングを見る>>

お気に入りに加えてくださいね

ランキング

最新トラックバック

RSSリンクの表示